神鳥の卵

第 40 話


「・・・っ、C.C.っ・・・!」

両目をうるませながら、私の名前を読んだ幼子に私は若干引いていた。あの卵から孵ったのは予想通りのあの騎士で、夢の中で再会を果たしたときにナナリー同様卵を押し付けられ、早く目を覚ませ!と早々に花畑から追い出されたのだという。その割にルルーシュのように即孵化とはならず、数日かかった。全てを画策した犯人であるナナリーは、スザク用の服も何もかも全て用意済みで、ルルーシュはさすがナナリーだと大絶賛していたが、いやまて、お前完全に妹の手のひらで踊らされているぞ?とおもったっても幸せそうな姿に何も言えなかった。
そんな卵もとうとう孵化し、乳児スザクが爆誕したわけだ。
感涙に震えながらもカメラを構えるルルーシュの前には、10歳のナナリーにプリンを食べさせてもらっている赤ん坊のスザク。

「天使だ、天使が増えた・・・ここが天国か」

と、おそらく無意識に口ずさんでいた。
いやいや天使はむしろ10歳のナナリーと6歳のお前だろうと言いたいが、言ったところで「頭がオカシイんじゃないか???」という目で見られるだけだと学習済みだ。
カメラでパシャパシャ写すなら動画で残せといいたいが、そうなると24時間撮影を・・・防犯カメラという名目で始めそうなので言わなかった。・・・なんだろう、妙に懐かしい気持ちだ。・・・ああ、このことを考えるのは二度目だったな。ナナリーのときもこうだった。妹を24時間監視しかねないと思いフィルム入のカメラで写すよう説得したんだった。「フィルムできれいに写すには技術と愛情が必要だし、その写真を自らの手で現像することを想像してみろ」と言ったら一瞬で堕ちた。

「お兄様、交代してもらえますか?」

にっこりナナリーが言えばイエスと即答するのがルルーシュだ。「るるしゅ!おにく!」と、乳児だというのに食欲旺盛なスザクの声が頭の中に聞こえた。・・・ロイド、セシル。この声が聞こえる条件は愛情じゃないないことが確定したぞ。私にスザクへの愛情はない。ルルーシュとナナリーは範囲内だが、スザクは完全に範囲外だからな。

「C.C.さん、どうかされましたか?」

ルルーシュにカメラを押し付けられ、スザク抜きでどうやって写そうかな?と悩んでいたら、ナナリーがやってきた。

「・・・いや、べつになんでもない」
「そうですか?ふふ、まるで弟ができたみたいですね。お兄様楽しそう」

弟だから楽しいのではなく、ナナコンでスザコンだからナナリーとスザクとこれからもいられるという現実に脳内お花畑になっているだけだとおもう。これがリヴァルだったなら、ここまでならないと断言できる。

「厄介な弟が産まれたものだな。今後大変だぞ?」

色々めんどくさい男だ。
ルルーシュは力を使えばその分若返る・・・ギアスを1度、いや、一人にかけると1年ほど若返るから、それに気づかれると絶対うるさいことになる。ジルクスタンの連中は10人以上いたからあそこまで戻ってしまったのだと今はわかっている。

「嫌ですか?弟は」
「あんな可愛げのない弟はいらないな」

パシャリ、パシャリとシャッターを切る。
ルルーシュとナナリーの前では子犬のような態度になるのも気にいらない。
・・・よし、ルルーシュの写真を数枚撮れたからよしとしよう。
6歳の幼子が乳児の世話を頑張る姿!!可愛い!可愛いぞ私の天使!

「妹も・・・いやですか?」

その言葉に、私の体はぴしりと固まった。
おそるおそるナナリーを見るとかわいらしい大きな瞳がわずかに濡れている。上目遣いで、こちらをじっと見ながら10歳のナナリーは言った。

「C.C.さんは私のお姉さまになってくれないんですか?」

悲しげな声がコロロにクリティカルヒットした。
・・・わかっている。
スザクを見て学習したのか、マリアンヌの血筋だからなのかはわからないが、これは計算ずくの、人をたらしこもうという演技なのだ。わかっている。 だが、ルルーシュが大絶賛するのも頷ける愛らしい少女が・・・永遠の命を得、今後も私とともに生きてくれるという美少女が、目に涙をため小首をかしげて言うのだ。
一人で数百年生きた魔女だからこそ・・・落ちないなんて、無理だ。

「何を言っているナナリー。私のことを姉だと思ってくれて嬉しいよ」

ルルーシュに気づかれない声で、会話をさとられない角度で。
全て計算づくだとわかっている。
わかっているが、抗えない。

「本当ですかC.C.さん!嬉しいです!!」

大輪の花が咲いたような眩しい笑顔。
かわいい・・・私の妹のかわいい笑顔の前に、そんな事は些細なことだ。
私をあっさりと陥落したナナリーは、にっこり微笑んでからルルーシュとスザクの元へ戻っていった。
ああ、わかったよルルーシュ。
お前の気持ちが。

「いもうとはかわいい いもうとはさいきょうでかわいいんだ」

思わずつぶやいてしまう。
だが、うん、悪くはない。
孤独の中で数百年生きた魔女は、仕方ないなとカメラを構え、幼い三人の幸せな笑顔をフィルムに焼き付けた

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